2025.02.06
「DOOH」×「メディアタイアップ」が実現する新時代のブランディング戦略

街中や駅などで人々の関心を惹きつけている「DOOH(デジタル屋外広告)」。企業がマーケティング活動をおこなう際の顧客との接触チャネルとして近年注目を集めていますが、その背景にはどのような期待される効果や先行事例があるのでしょうか。今回、DOOHで多数の実績を持つ株式会社CARTA MARTKETING FIRMのPORTO事業局を率いる吉田大樹氏に最近のトレンドや効果的なブランディング施策への活かし方などのお話を伺いました。
この記事でわかること
目次

プロフィール紹介
吉田 大樹 氏
株式会社CARTA MARTKETING FIRM PORTO事業局 局長
2007年にCCIに入社し、アドプラットフォームビジネス・ディビジョンの事業を担当。2021年1月に、VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)の運営する統合マーケティングプラットフォーム「PORTO」を会社分割して株式会社PORTOを設立し、代表取締役社長に就任。2023年10月より、現職。
DOOH活況の背景にはマーケターの“納得感”あり
――はじめに「PORTO」について教えてください。
吉田氏:私が責任者を務める「PORTO」はCARTA HOLDINGSのグループ会社CARTA MARKETING FIRMが実施しているサービスで、広告プラットフォームのDSPを事業ドメインとしています。
DSPというと数年前までバナー広告やネイティブ広告を配信してCPA/CPCを求めていくイメージをお持ちの広告主様や代理店様も多かったのですが、「PORTO」はDOOHをはじめ最近OTTと呼ばれている動画広告や音声広告など新しいフォーマットの広告も配信しています。
それらを含めて、従来のマスメディアやオフラインメディアをデジタル化・プログラマティック化して「一括配信できる」ことが最大の強みであり、そうしたあらゆる領域を横断したサービスを展開していることが特徴です。

――最近のDOOHのトレンドを解説いただけますか?
吉田氏:まずハード面として、看板広告がどんどんデジタルサイネージ化しています。またトレンドには「プランニングをどうできるか?どんな買い方が可能か?どのようなクリエイティブがあるか?」などいろんな観点があります。
従来は「若者にリーチしたい時は渋谷、ビジネス層に当てたい時は大手町や品川のビジョン」というようなプランニングや買い方をされていましたが、最近ではデジタルデータを活かして「場所」だけでなく対象の接触頻度が高い「時間帯」でも買えるようになりました。
それにより、ビジネス層に当てたい場合は、例えば平日の昼間、このビジネス街のビジョンに「ファイナンス情報」や「ビジネスニュース」を配信するだとか、サッカーを訴求したい場合は「球技場近くのビジョン」というように、対象の興味関心に応じて場所や時間帯などを見極めてプランニングできるようになっています。
クリエイティブという観点では、今は動画で広告を流すことができるので「情報量や訴求力」がアップしたクリエイティブが増えてきました。ビジョンから飛び出して見える3DクリエイティブもSNSで話題になっていますね。
――DOOHの出稿を考える方にとっての「課題感」を教えてください。
吉田氏:少し前にPORTO独自で広告主様や広告会社様などのマーケターの方々にDOOHにおける課題感についてのアンケートを実施したところ、約7割の方々が「効果測定に課題を感じる」という結果になりました(※図1)。
以前は「1ヶ月間どこのビジョンに出して何回再生された」というレポートだったので、それが結果として良いのか悪いのか?効果検証が困難だったことが要因と考えられます。
一方で、そうした課題の解決に関わる最近の変化として「デジタル化による効果測定の進歩」が挙げられます。PORTOでは調査会社様や各種データと連携することで、広告接触後の効果検証が可能です。具体的には「ブランドリフト調査」「購買計測」「アプリのインストール」「来店計測」「広告に触れた方のデモグラフィック」などの集積データを用いた複合的な効果測定がこの1〜2年で可能になっています。

――なぜ今DOOHが活況なのでしょう?背景としてどのような要因が考えられますか?
吉田氏:2020年からコロナ禍の緊急事態宣言などで「屋外に人がいないのでは?」という状況になり、広告主様の出稿意欲が低下した時期がありました。一方、この数年の間で屋外広告(OOH)のデジタル化が急速に進み、コロナ禍においても実は粛々と技術が進化していて、それらが今になって花開いた感じです。
周辺の事情として「テレビ離れ」など広告出稿の多様化もあると思いますが、それよりもコロナ禍が明けた時に「DOOHでできることが多くなっていて出稿意欲が高まり、DOOH自体が強くなっていた」ということが大きいと思います。
さらに先ほどお話しした変化以外にWebメディアと同じように「インプレッションで計測して、インプレッションで課金できるようになった」ことも要因でしょう。従来の屋外広告は「このビジョンにこの期間、何回放映します。きっと何人くらい通行します」というようなカレンシー評価方法でしたが、「どれだけの人が視認したのか」をインプレッションベースで課金・レポートできるようになったので、以前よりも「実態に沿った課金でリスク軽減できる」という納得感もあって需要が増えているのだと思います。
カメラ映像で通行人が「ビジョンを実際に見ているかどうか」の判定も可能になっているので、例えば1,000人見たと推定される場合は1,000人分だけ課金することができるんですよ。

ブランディングにおける、成功するDOOH施策の条件
――DOOHの「ターゲティング配信」について最新のスキームを交えて教えていただけますか?
吉田氏:PORTOはDSPとして提携会社と組んで配信していますが、その中でも通信キャリアから膨大な「モバイル空間統計データ」を取得可能な「LIVE BOARD」を通じて「どんなデモグラフィックで、どのような興味関心を持っている人が、どのビジョンでどのように接触するのか」といった詳細まで分かるため、それらを元にターゲティング配信しています。
また、我々ならではのところで、接触したであろうデータを抽出して「バナー広告でリターゲティング」するなど他のデジタルの施策と連動することもおこなっています。
――この1〜2年の象徴的な事例を教えていただけますか?
吉田氏:屋外で触れることが多いDOOHですが、人って「天気」や「気温」などに敏感になりやすいですよね。PORTOのサービスでは「気温が20度以下の時だけ、天気が晴れの時だけ」など気象情報を取り入れて広告を出し分けすることも可能です。例えば、製薬会社様が花粉の飛散量が多い時だけ花粉症の薬を訴求して「ブランドリフトできた」となった事例があります。
広告主様の特性に応じて「午前より午後に配信した方が、実際に効果があった」など、接触する時間帯によっても期待される効果が異なります。どのタイミングで当てるのが最も効果的であるかを可視化できたキャンペーン事例も数多くありました。
――DOOHでのブランディングに効果的なクリエイティブの条件として、どのようなことに注目していますか?
吉田氏:続々とサイネージ化して「訴求力が高い動画」を出せるようになったことに加えて、もう一工夫して「SNS」の投稿をリアルタイムに近いかたちで載せたり「QRコード」を加えたりしてクリエイティブ自体に工夫を凝らす事例も増加しています。
15秒動画などの純広告でも魅力的な世界観でブランド訴求できると思いますが、天気やニュースなどのコンテンツは、より視認性が高まるという統計データも出ていますので、私としては特にコンテンツをミックスすることによる高い視認性に注目しているところです。
先ほどの気象情報の話と関連していますが、PORTOの取り組みとして「日本気象協会」とクリエイティブを共同開発しています(※図2)。
都内だと1日3回ほど配信される気象予報のビジョンの右上にクライアントのクリエイティブを露出して「コンテンツをスポンサードするタイアップ」は広告主様の関心度が高いです。テレビでも親しまれていた「ヤン坊マー坊天気予報」なんかはいい例ですよね。

こうしたタイアップは注目度や話題性も増すため第三者配信にも有効であると言えるでしょう。
「ダイヤモンド・オンライン×PORTO」DOOHブランディングブーストの取り組み

https://adinfo.diamond.jp/wp-content/uploads/CCI_DOOH-1.pdf
――この度、ダイヤモンド・オンラインはPORTOとのコラボメニュー「DOOHブランディングブースト」をリリースしましたが、このタッグは企業の施策にどのような利点をもたらすことができるとお考えですか?
吉田氏:ダイヤモンド・オンラインとのコラボメニューではクリエイティブが「コンテンツ」に非常に近いかたちとなりますので、従来の“The 広告”的なクリエイティブにはないような視認性の高さや注目度でブランディング施策に貢献できると考えています。
ビジネス層に高い関心を持たれているダイヤモンド・オンラインが、これまで企業と実施されていたようなタイアップ広告をDOOHに動画配信することで訴求力のあるクリエイティブになることが想定されます。また、プランニングの段階からビジネスメディアであるダイヤモンド・オンラインならではの強みを活かしたターゲティングで「ビジネスパーソンがいる場所」を狙って放映することでも企業ブランディングの効果をブーストできると思います。
採用ブランディングやインナーブランディングなど、複合的な効果を狙うことも可能です。特に企業所在地の近くや最寄駅からオフィスに向かう場所にあるビジョンは、企業で働く方々にとっても日頃から目に触れることで従業員エンゲージメントを高め、企業価値の向上にも貢献できると思います。
また、DOOHを配信するだけでなくダイヤモンド・オンラインのデータを組み合わせた柔軟なご提案を一気通貫でできることも強みです。そのため、接触者のデータからバナーでリターゲティングしてダイヤモンド・オンラインへ誘導することや、そこから先の「ブランドリフト」や「効果測定」などの提案もご要望に応じてしっかりとご一緒させていただきます。私たちが培ってきたネットワークや実績からもご期待いただきたいですね。
――要望に応じて「ブランドリフト」提案もできるとのことですが、具体的に教えていただけますか?
吉田氏:接触した人と接触してない人とを比較して広告主様のサービスなどの「利用意向」や「ブランドへの好意」などを調査することができます。DOOH配信後のインプレッション数という定量的なことはもちろん、利用意向や好意など定性的なこともブランドリフト、レポートとして提供いたします。
実際に弊社では、「コンテンツ寄りのクリエイティブ」は通常よりも利用意向や興味関心が高まる傾向にあり「ブランドリフト」した実績や継続を希望された事例が多数あります。統合的に分析してPDCAを合わせることで予算の最適化ができ、マーケティング施策を振り返ったうえで次に繋げられるという点も喜んでいただいています。
今後のDOOH市場の展望について
――最後に今後のDOOH市場の展望について教えてください。
吉田氏:DOOHのデジタル化、プログラマティック化は今後ますます加速することが想定されており、B to C企業のみならずB to B企業にもDOOHが選ばれています。
これまで面白いクリエイティブが話題になってきたOOHですが、DOOHの市場拡大に伴いSNSでより拡散され「こんな場所に大きなビジョンができた」といった話題も多くなるでしょう。企業においても「定量化して説明できるうえ定性的なエモーショナルな面もフォーカスできる」という特性自体がDOOHの面白さとなり、広告主様の満足度向上にも繋がっていくと思います。
また同じ接触回数であっても1つの場所で接触するよりも、複数の場所で接触する方がブランドリフトは高まる傾向です。例えば、同じクリエイティブを同じ場所で5人見るよりも5ヶ所で5人見る方が認知は向上します。ビジネスパーソン向けの動画広告はタクシーやアプリなどでも増えているので、DOOHだけでなくスマホやPCなど各種メディアとの連動から異なる接触ポイントを数多く設けることも「認知施策」において有効だと思います。
仕事帰りの飲み会で賑わう19時以降の繁華街や、家族と休日を楽しむ週末の行楽地などでは仕事モードの内容は好まれない場合も。今は接触ポイントや時間帯などを細かくセグメントできるようになっているので、ビジネス層のマインドに与える影響も考慮し、フリークエンシーを高めてブランディング効果をブーストしていく世界観を作っていきたいですね。

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